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ベジータは誰に敗れたのか?

 先月、『ドラゴンボール』について「ピッコロ大魔王」編の衝撃は半端なかったという記事を書き、色んな人の反応を頂きました。感謝感謝です。そうした意見を読んでまた語りたくなったので、またしても『ドラゴンボール』についての語りです。

 当然ながら『ドラゴンボール』全般に対するネタバレ含むんで、最近『改』で初めて見始めたなんて人は注意して下さいな。



 考えてみれば、「サイヤ人」編って『ドラゴンボール』の中でもかなり異質ですよね。

◆ラディッツ vs 悟空・ピッコロ(・悟飯)
◆ナッパ vs ピッコロ・クリリン・悟飯(・天津飯・餃子)
◆ベジータ vs 悟空・クリリン・悟飯・ヤジロベー


 それまでの『ドラゴンボール』は、天下一武道会に代表されるように1人vs1人のタイマンバトルが基本でした。もちろん個別のケースを見ていくと、ピッコロ大魔王戦に天津飯が舞空術で助けてくれたり、桃白白戦でウパが如意棒を投げてくれたりということはありましたが―――基本路線として、「悟空vs誰か」という構図があったと思います。相手が強敵になればなるほど。


 そう考えると、1人vs2人、1人vs3人、1人vs4人という構図の「サイヤ人」編は非常に“『ドラゴンボール』的ではない”と言えるのかもと思いました。もちろん「サイヤ人」編の頃は物凄く大人気でしたし、自分も毎週興奮して読んでいましたが……(違和感を覚えることもなかった)

 これまでの記事でも書いたように、「『ドラゴンボール』という作品は変わり続けることで人気を保ち続けた」ことの象徴でもあるのかなぁと思ったのです。



 一つ目には、「悟空vs誰か」という構図を続けたことで仲間キャラが増えてしまい、もはや「1人vs1人」というバトルに収めることが出来なくなったという事情があったのかなと。
 天下一武道会に代表される当時のジャンプ式トーナメントバトルも、“主人公以外のキャラ”に活躍の機会を与えるシステムだったと思いますが……3回目の天下一武道会は、8人全員が“既出キャラ”という事態でしたものね。

 ならばいっそのこと、仲間キャラを一チームとして敵と戦わせた方が一人一人に見せ場が出来るし仲間同士のドラマも生まれる―――と考えると、非常に理に適っていますよね。ピッコロと悟飯の物語は言うまでもなく、サイヤ人編のクリリンやヤジロベーはムチャクチャ格好良かったですもの。



 二つ目には、「悟空が手も足も出ない敵」よりも「悟空とピッコロが手を組んでも適わない敵」の方が強そうだという。「悟空が手も足も出ない敵」はピッコロ大魔王編で描いちゃったので、それ以上のインパクトを与えるには複数バトルしかない、と。



 三つ目には、当時は「強大な敵vsみんなで力を合わせて戦う」という構図が受け入れられる状況だったのかなーと。「サイヤ人」編の連載は88年~89年。ちょうど『ドラゴンクエスト3』『4』が発売された頃で、ファミコンではパーティバトルのRPGが大流行していたことも関係ありそうです。
 (92年の『ストリートファイターII』大ヒットでまた状況が変わる)


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○ 悟空はベジータに勝てなかった
 個人的には、ベジータ戦は『ドラゴンボール』全体の中でもトップ3に入るくらい好きなバトルです。
 最初は「悟空vsベジータ」という、『ドラゴンボール』らしい「1人vs1人」のバトルから始まり。逆転に次ぐ逆転に次ぐ逆転に次ぐ逆転で、悟空・クリリン・悟飯・ヤジロベーの4人がそれぞれ活躍して。「満月を見ると大猿になる」という作品初期からの設定を2度も活かし、最終的には“大猿悟飯にベジータが潰される”という形であの死闘が幕を閉じたという。


 裏を返すと「悟空は一人ではベジータに勝てなかった」んですよね。
 界王さまなんかは「孫悟空がやられたときは、正直もうだめだとおもったぞ」と言っていましたし。「1人vs1人」の勝負としては完全にベジータに軍配が上がっていました。大猿化というチートを使ったとは言え、それも含めて実力差でしょうし。

 自分はだからこそ、「悟空一人では勝てなかった」相手に対して、一人一人の力は大したことがないかも知れない「みんなの力を合わせて勝った」のに感動したし、だからこそベジータ戦が大好きなんですが―――「1人vs1人」のタイマンバトルこそが『ドラゴンボール』の真髄だと考えている人からすると、あの結末はそれほど支持できるものじゃないのかなと思いました。


 「『ドラゴンボール』ですら複数バトルはイマイチだった」という御意見もありましたし。
 この辺は好みの差ですね。



 現に、「サイヤ人」編以後の『ドラゴンボール』は再び「1人vs1人」の方向に戻るんですよね。
 「ナメック星」編初期はベジータが意図的にそう仕向けたところがありましたし。ベジータ戦同様に「強力な敵vs仲間全員」という構図だったフリーザ戦も、最終的には「フリーザvs超サイヤ人悟空」の「1人vs1人」に変わりましたし(「サイヤ人」編と同じ展開はやめようという意図があったんじゃないかと推測します)。

 「人造人間」編は言うまでもなく、「魔人ブウ」編もラスト以外は「1人vs1人」が続きました(わざわざ仲間キャラ同士を合体までさせている)。



 これは『ドラゴンボール』だけでなく……
 後の多くのジャンプバトル漫画は「1人vs1人」路線を選んでいますよね。「1人vs1人しか描けない」のか、「1人vs1人しか描かない」のかはさておき。『るろうに剣心』の和月先生なんかは「1人vs多数の戦いはイジメの構図に似ているので極力描きたくない」と仰っていましたし、実際に「1人vs1人」のバトル漫画は人気です。

 もっと言うと、バスケ漫画である『スラムダンク』も意図的に「1人vs1人」の要素を強くしていましたし、『ヒカルの碁』も『テニスの王子様』も「1人vs1人」の競技ですし―――バトル漫画に限った話でもないのです。
 日本で一番売れている漫画雑誌で「1人vs1人」が支持されている以上、日本人の中に「1人vs1人」を支持する国民性があるのかなと考えたりします。



 ベジータは悟空に勝っていた。「1人vs1人」では間違いなく。
 でも、「1人vs4人」では“地球のみんな”が勝った―――

 実はこれ、魔人ブウ編のラストも一緒なんですよね。
 『ドラゴンボール』の面白さは「強さだけを競ったワケではなかった」ところにこそあるんじゃないかと考える最近です。


(関連記事:『ドラゴンボール』におけるインフレバトルの葛藤


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| 漫画読み雑記 | 17:59 | comments:8 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

スーパー戦隊シリーズとか、「正義の味方が五人がかりで敵一人をフルボッコ」みたいに揶揄されることがあります。
それでも戦隊ものは人気があり続けてますね。
最終的には合体ロボットで、1対1の戦いになってるからかもしれませんが。

1人VS1人を支持する国民性って、やっぱり「武士道」とかが関係してるんですかね~。
正々堂々と戦うとか、卑怯な手段を使ってまで勝ちたくないとかやっぱりありますもんね。

| アララ | 2009/05/10 17:16 | URL |

ベジータって負けた後めっちゃ努力してるのにカカロットとの差がどんどん開いてるよね。

俺にはあれが虚しくって悲しくって。重力300倍でのトレーニングとか涙モンだったね。

| ああああ | 2009/05/10 19:57 | URL |

1vs多(1は主人公側)で爽快感を感じられるジャンル(ベルトスクロールアクション)が一時期流行った事もありますが
漫画の方では敵が1人で主人公チームをフルボッコにするのはともかく、その逆はあんまり主流にはならないですね
覚醒悟飯がセルジュニアを全滅させたシーン等、対象が雑魚の場合は無数にありますが

| Folken | 2009/05/10 22:16 | URL |

悟空が元気玉を作るときにピッコロ(フリーザ戦)やベジータ(ブウ戦)が足止めしたり、
悟飯VSセルのかめはめ波対決の時もベジータが不意打ちしたりと、完全な1対1ではないんですよね。
悟空がブウ戦の最後に言った
「おめえはすげえよ、よく頑張った…たったひとりで、今度はイイ奴に生まれ変われよ、一対一で勝負してえ…待ってるからな、オラも もっともっと腕を上げて…」
という言葉は、今までの多人数バトルに対しての悟空の本音なんじゃないかなと思います。

| てつはる | 2009/05/11 02:54 | URL |

テニスの王子様に関してはダブルスもありますよ
主人公がシングルなので影は薄いかもしれませんが

| BC | 2009/05/11 20:39 | URL |

国民性でしょうね。
マンガアニメに限らず時代劇なんかでも、主役を取り囲む悪党ですら一斉には斬りかからないんですよね。
1人ずつ順番に斬られていくという・・・。

| どんちゃん | 2009/05/12 11:14 | URL |

敵>味方なら複数でかからないと勝ち目は無い
敵<味方なら勝つ事がわかっているのでつまらない

読者は味方目線で物語を読んでいて、且つ勝利を求めている
やはりピンチからの勝利の図式が一番興奮するのではないでしょうか

1対1だと強いほう(頭脳含む)がヘマしない限り戦況は変わらないですし、
1対複数だと主人公のピンチ→仲間の助け→勝利と
戦況の振れ幅を大きく描きやすいのでは?

| ああああ | 2009/05/13 12:32 | URL |

能力バトルだったら1人vs多数でも面白いと思います。
ただ、肉弾戦だと途端に1人vs多数を描くのが難しくなってきますね。ラディッツvs悟空、ピッコロでは時間差じゃなく2人同時に攻撃を仕掛けてましたし。
そういった点ではクロロvsゼノ、シルバを描いた冨樫先生の方が複数バトルは上手いと思いました。

| レト | 2009/09/30 13:05 | URL | ≫ EDIT















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